われおもうに

東京医科大学の女子一律減点問題 批判のお手本はこれかな

 この大学だけの問題ではたぶんない

東京医科大で裏口入学につづいて発覚した女子受験生の一律減点問題。女子(と三浪以上の男子)の合格者を抑えるため二次試験の点数を一律2割減点していたという事件だけど、これをニュースではじめて見たときは「とんでもない」とあきれたのだが、すぐに「よそでもやってるよな、たぶん」と思った。大学病院の過酷な勤務状況なんてどこも事情は同じだろうし、他の学部でも、たとえば理工系なら実験要員として男手が必要と考えそうだ。大学院になるとなおさらその傾向が強そうな気がする。

大学入試だけの話ではない。企業の採用では間違いなくやっているはずだ。男女雇用機会均等法によって表向きは男女差別を禁止されたが、募集要項に書かれていないだけで、どこの企業も採用する男女の比率は意図して決めていると思う。就職してからの昇進も男が有利。というか、中枢を担うのは男と最初から決めつけているのが普通だと思う。

自分が男で、被害を被らない側だったから、気づかなかったり、場合によっては当然のことと思っていたり・・・要するに意識しないままに自分自身が差別をしていたことにあらためて気づいた。

自分もその中にどっぷり浸かっているということだが、日本のダメな部分が象徴的に現れた事件なのではないかと感じている。その他のいろいろな問題点にも通じる本質的な欠陥。だから、じっくり考えてみなければならないと考えていた。

大学側の言い訳に対する反論はこのコラム一つで十分

昨日、ツイッターで見つけた次の論考は、「女子は大学卒業後、結婚や出産で医師をやめるケースが多い」という東京医大側の言い訳を、データをもとに実に小気味よく論破している。

独立行政法人経済産業研究所(RIETI)のサイトに寄稿された山口一男氏の文章。
データは誰にでも手に入る既存のものばかりなんだけれど、それで十分すべての逃げ道が塞がれていて、反論はこれ一つあれば十分だろうと言いたくなる見事なものだ。知性というのはこういうふうに使うためにあるんだよなと思う。

男が勝手に思い込んでいるある種の「常識」が、実はまったく根拠も実態もない代物であるということ。もしかしたら何十年か前にはその「常識」は現実に即していたのかもしれないが、とうの昔に現実のほうが変化してしまっている。でも、旧態依然の「常識」がまかり通っている。

この旧態依然の「常識」が今の日本の政治や社会を閉塞させているように思えてならない。少しじっくり考えてみたいと思っている。

 

※写真は東京医科大学のホームページのトップ。