お気軽な話

寝起きの錯覚

ベッドの横に腰ぐらいの高さのタンスがあって、その上にスタンドと時計と消臭スプレーが置いてある。だから朝目覚めて最初に目に入るのはだいたい写真のような光景だ。でもはじめからこのようには見えるわけではない。寝ぼけているからだろうが、まず消臭スプレーだけが網膜に浮かび上がる。

実際の容器は白いが、寝ぼけているからぼんやりと黒っぽいシルエットだけが像を結ぶ。そしてだいたいの場合、人の足と錯覚する。

分かるかな。
レバーの部分はそのシルエットから消えていて、ふくらはぎから先の部分が天井へ向けて突き上げられているように見えるのだ。容器の胴の部分はふくらはぎにしては太すぎるけれど、寝起きの意識には何の違和感もなくふくらはぎに見える。

ちなみに上の写真は素足の両足が写っているけれど、実際に見えるのは派手なストッキングを履いた片足だけ。ファブリーズの容器は1個だけだし。フリー素材でイメージどおりの写真が見つからなかっただけだ。

他のものに見えるときもあるような気がするが、記憶には残っていない。

目覚める寸前に、誰かが振り上げた足を見る。女性なのは間違いなさそうだが、誰なのかは分からない。何かストーリーがあったような気配も感じるけれど、記憶に残っていることはない。そしてすぐに視界が明るくなってきて、スプレーのレバーが見えるようになると「あ、ファブリーズだ」と気づき、そこで完全に目が覚める。

別に女性の足をいつも夢見ているわけでは(たぶん)なくて、目が開いてこのスプレーが視界に入り、でも頭がまだ十分に動かないから錯覚するということの繰り返しなのだろう。だからスプレーを別の場所に移せば、きっとこんな錯覚は見なくなるに違いない。

でもタンスの奥のほうに移しても“足先”だけは見えそうだし、それよりはふくらはぎから見えるほうがいいような気がして放置している。というか、面倒臭いだけだけどね。寝起きに見る夢(みたいなもんだ)としては特に不愉快なわけでもないし。それに「なんだあの足、誰の足だ」と毎回かなり真剣に考えるので、それで頭に血が巡って、その後はサクッと起きられるという効用もある。

他人が聞いたら気持ちの悪い話だろうけど、本人はわりと平気です、ハイ。