安倍晋三首相が国会で云々(うんぬん)をでんでんと読んだ(※1)と聞いたときは「そこまでバカなのか」と思ったし、その道の先輩格である麻生太郎副総理が最近有無(うむ)をゆうむと読んだ(※2)のはニュース映像で見ていたので、「なぜ誰もコイツを引退させない」と思わず声に出してしまった。
この2人に関してはそもそも総理大臣が務まるような能力も器もないと僕は思っている。それどころか、(麻生氏が首相在任期間に何をしたかは覚えていないが、)安倍首相については、東条英機にも匹敵する歴代最低の首相だと思っている。
だが、それはともかく。
漢字の読み間違いは、仕方ないよなと思う。
僕だってやらかすし。
というか、年を取ると、間違えて覚えてしまった読みをなかなか修正できない。学習能力が落ちてしまったんだろうね。
僕の場合
僕の難敵を紹介すると…
- 場末 バスエ
これは「バスエ」か「バマツ」かわからないまま来てしまって、たぶん10年以上前から何度も辞書を引いて「バスエ」と頭に叩き込もうとしたんだけど、いまだにどちらか迷う。 - 備忘録 ビボウロク
これは読み間違い以前の問題で、「忘備録」と逆さに覚えてしまっていた。音の響きも「ぼうびろく」のほうが自然に感じるんだけど、これは僕だけでしょうね。いまだに覚束ない。 - 固執 コシツ、コシュウ(どちらでも可)
これはなぜか「コシュウ」が正しくて「コシツ」は間違いだと思い込んでいて、ようやく最近になってどっちも間違いではないということが身についた。 - 上意下達 ジョウイカタツ
つい「ゲダツ」と読んでしまう。「上下関係」は「ジョウゲ」と読むだろうが!と刃向かいたくなるんだけれど、『ほぼ日刊イトイ新聞』の「声に出して読めない日本語」に「上司(じょうし)の意見が部下(ぶか)に達する」という説明があって参りました。 - 今上天皇 キンジョウテンノウ
今の天皇を指すことは前後関係ですぐわかるから辞書を引くこともなく、読みも適当に済ませていた。その場その場で「コノエ」とか「コンジョウ」とか。でも最近、それもかえってメンドウだと思って辞書を引き「キンジョウ」と読むことをようやく知った。在位中の天皇を指す一般名詞であることを知ったのもこの時。今という字があるから、それもあるかなと思っていたが、今の天皇の別称か何か、つまり固有名詞の可能性もあるよなとお気軽に考えていた。
こんな感じ。
他にもあると思うけど、思い出せない。
というより、間違いと認識していないものがこの他にたくさんある。間違いなく。
だから、人のことはバカにできない。
学校で教わった?
それにしても、人は漢字の読みをどうやって覚えるのだろう?
学校で?
小学校のときは漢字ドリルというのがあったし、中学校でも漢字のテストはあったような気がする。ただ、読みよりも書き取りがメインだったような気がするんだけど、どうだろう。
中学・高校の国語の定期テストにも漢字の出題があった。でも、範囲が決まっていたから、いわゆるお助け問題だったという印象だ。
大学入試にも漢字の問題は出たけど、こちらは逆に範囲が広すぎたので勉強らしい勉強はしなかった。
こうやって考えてみると、学校で覚える漢字なんて高が知れてるなと思う。まあ、基礎となる部分はカバーされてるんだろうけれど。
云々と未曾有を僕はいつの間にか読めるようになっていたけれど、学校で習ったのかどうかは覚えていない。そして場末、備忘録、固執といった漢字の読み方を間違って覚えたのが、勉強をサボったせいなのかどうかもよくわからない。
読書家なら漢字が読めるのか?
たぶん漢字の読みは、学校で習う何倍もの数を学校の外で覚えるはずだ。
テレビとか他の人が読むのを聞いてというのも多いと思うが、なんと言っても一番多いのは読書を通じてだろう。だから、たくさん本を読む人のほうが読まない人より多くの漢字を知っている。一般論としてそれはわかる。
でも、いちいち辞書を引くわけでもないしな、とも思う。
本を読むときって、書いてある内容を知りたいのであって、とにかく先に進みたいという思いがあるから、意味さえわかれば読みなんてどうでもいいやってことになりません?
僕の場合で言うと、場末なんて言葉は通俗的な小説ぐらいにしか出てこなくて、さらに言えば、ほとんどの場合「場末のバー」という決まりきった組み合わせでしかお目にかからない。裏通りの安っぽい店が想像できればそれで十分。「ばすえ」でも「ばまつ」でもべつにどちらでもいい。
備忘録、固執、上意下達も、意味ははじめから過不足なく正しく理解していた。今上天皇だけは理解が不十分だったから、あのまま天皇が代替わりしていたら混乱していたかもしれないけれど、それでもこれまでのところ論旨を取り違えるような支障はなかった。だからいい加減な覚え方で済ましていたとも言える。
べつに自分が読書家だと言いたいわけじゃなくて、僕よりもっと大量の本をずっと速いペースで読むような本当の読書家がいくらでもいるだろう。そして、そういう人こそ、もしかしたらこの傾向がさらに強いのではないのかな、ということだ。
学校で習う漢字なんてごくわずかで、その後、読書を通じて出会う漢字の多くは、文脈の中で意味さえ推測できれば読み方まではこだわらない。ほとんどの日本人はこうなんじゃないか。ま、そうじゃない人を教養のある人と言うのかもしれないが。
だから、安倍首相や麻生副総理に学生時代のお勉強が足りなかったとか、読書量がどうとかと言うのはちょっと違う気がする。たまたま彼らが使った学校教材に出てこなかっただけかもしれないし、速読の天才である可能性だってゼロではないのだから。あくまでも可能性の話だけど。
とは言っても、デンデンはないよな、デンデンは。ミゾウユウはわからないでもないけど。
※1 安倍首相 ※2 麻生副総理 ちなみに、「有無」に関してはその後「ゆうむ」とも読むという反論が上がった。それはそれで正しい指摘なのだろうが、少なくとも僕の手許にある「福武国語辞典」には「ゆうむ」の項目はないし、「うむ」の項に「ゆうむ」とも読むとは書かれていない。それに、麻生氏が両方の読みを知ったうえで「ゆうむ」を選んだとは思えない。両方知っていたら「うむ」を選ぶのではなかろうか。 麻生氏は2008年9月〜2009年9月まで首相在任。その時代の読み間違いは以下のサイトにリストがある。 |