2014年の英国映画
監督:マシュー・ウォーチャス
脚本:スティーヴン・ベレズフォード
出演者:ベン・シュネッツァー、ジョージ・マッケイ
ジョセフ・ギルガン、フェイ・マーセイ他
2014年の第67回カンヌ国際映画祭でクィア・パルムを受賞した作品。

これはもう掛け値なしに面白かった。
サッチャー政権の炭鉱合理化政策——巨大労組の破壊工作でもあった——に対し一年以上の長期に渡るストライキを決行したウェールズの炭鉱労働組合へ、ロンドンの同性愛者グループが金銭支援を行った。…1984年から85年にかけて実際にあった話だ。
LGSM結成
発端は、オープンゲイとして活動していたマーク・アシュトンが感じた違和感だった。
自分たちのデモや集会を邪魔する警官の数が減っていないか?
テレビをつければ、北部の炭鉱で一斉に行われているストライキの模様が延々と報じられていた。合理化反対を訴える炭鉱労組は一歩も引かない覚悟で実力行使をつづけ、権力側も全国の警官を動員してこれに力で対抗していた。
ついこの前まで自分たちに暴力をふるっていたロンドンの警官たちは、今度は地方の労組員に警棒を振り上げているのか…。あの労働者たちと自分たちは同じ敵——サッチャーとその政権——と闘っている。そう悟った彼はすぐに同性愛仲間に呼びかけた。炭鉱労働者を支援しよう。
こうして生まれたのが「LGSM(炭鉱夫支援同性愛者の会)」だった。
集まったのは彼を含めてたった6人だったが、街頭に立ったり、集会の場で募ったりして地道なカンパ活動を始めた。
同性愛者の支援は受け付けない?
呼びかければ協力してくれる人は多かった。少しずつだが浄財が集まる。ところが、いざその金を送ろうとする段になって、新たな、そして予想を超えた問題が起こる。労組側が受け取ろうとしないのだ。ロンドンという大都会でさえ、同性愛に対する偏見は根強い。炭鉱がある地方となると尚更で、彼らから支援を受けること自体に拒絶反応が働くらしい。
さんざん断られた挙句、唯一受け入れてくれたのがウェールズのオンルウィンという村のディライス炭鉱労組だった。代表のダイはすぐにロンドンを訪れ、心からの謝意を述べてLGSMを村へ招待する。
だが、労組員も村人も同性愛者に対して偏見を持つ者が大半だった。執行部から抜ける者もいたし、歓迎パーティも不穏な空気に包まれた。
女性たちの反応
その空気を打ち破ったのは、LGSMメンバーの一人・ジョナサンのダンスだった。
ディスコ・ミュージックに合わせて派手に踊り回ると、戸惑う男性陣を差し置いて女性たちが吸い込まれるように彼を取り巻き、自らも踊り始めた。若手だけではない。老いも若きもみんなが笑顔で踊り狂った。
たんなるノリノリのシーンに見えるけれど、彼らを最初に受け入れたのが女性だったというのは本当だったんじゃないかなと思う。
実際、炭鉱夫はみんな男で、労組員もそう。女性はいつも添え物のように傍らで手伝いをさせられてきたのだ。男性陣同様に同性愛に対する差別意識はあったとしても、マイノリティとして通ずるものを直感したに違いない。
その後もLGSMのカンパ活動はつづき、オンルウィン村との交流もつづく。徐々に変わってきた点があるとしたら、女性が村側の中心になっていったことだろうか。
サッチャー政権による締めつけが厳しさを増し、労働者側の劣勢が明白になっても、またエイズが社会問題化し、ゲイへの風当たりが強まっても、そしてタブロイド紙が“同性愛者の支援を受ける労組”を揶揄しても、LGSMはめげずに支援をつづけた。
運動の終わりとゲイ・プライド・パレード
しかし1985年3月、一年以上に渡ったストライキは終了する。労働者側の敗北だったが、彼らは誇り高く最後の行進を行った。そしてLGSMのカンパ活動も終了した。
3か月後の6月、ロンドンで催されたゲイ・プライド・パレードの出発地点にLGSMの面々の姿があった。
彼らはサッチャー退陣を求める文言など(いつものように)政治的主張を大書した横断幕やポスターを持参していたが、主催者側は政治的アピールは認めないと言ってそれらの廃棄を求めたうえに、彼らを行進の最後尾に追いやろうとした。
そのときだった。
会場にディラス炭鉱労組の役員たちが、LGSMに寄贈されたマイクロバスで到着する。それにつづいて大型バスが次々とやってきた。ウェールズ地方の炭鉱労働者たちが大挙してやってきたのだ。
バスの側面には、「LGSMを支援する炭鉱夫の会」と大書された横断幕が。「LGSM」のモジリだ。
これにはやられた。涙がこみ上げた。
主催者は、あわててLGSMと炭鉱労働者たちをパレードの最前列に導いた。参加者の中で最大の集団だったのだから当然だろう。彼らが持参した(政治的な)横断幕がパレードの最前列で翻る。
エピローグにも心が震えた
エンディング・ロールとともに物語のその後に言及する映画はけっこうある。
この作品にもテキストでエピローグが添えられていた。これがまたグッとくる内容だった。
翌年の労働党大会で採択されたマニフェストに、それまで否決されつづけてきた同性愛者の権利保護が盛り込まれた。それを強力に支持したのは全国炭鉱労働組合だった。
主要な登場人物のその後も紹介された。
LGSMとの交流を通じて一介のボランティアから労組執行部の中心人物へと成長したシャーン・ジェームズは、ストライキ終了後、LGSMのジョナサンの助言に従って大学で学び、卒業後、スウォンジー選挙区初の女性議員になった。
LGSMの発起人で、つねに卓抜したアイデアと行動力で会を引っ張ったマークは、残念ながら26歳の若さでエイズによりこの世を去った。
だが、英国で二人目のHIV感染者だったジョナサンは、最近元気に65歳(だったと思う)の誕生日を迎えた。
エピローグを読んだ瞬間に、それまで見ていた物語の世界と現実とが地つづきになって、自分の中に何かが刻み込まれる経験というのを何度もしてきたが、このエピローグのパンチカは群を抜いていた。こんなの、久しぶり。
人権を中心に置いた社会派の映画なんだろうなと思って、見始めるのにほんのちょっと気合いが必要だったんだが、冒頭からテンポがよくて一気に引きこまれ、純粋なエンタテイメントとして申し分なく楽しむことができた。
本当に面白かったし、目頭が熱くなった。
おまけ

左は(たぶん)英国版の宣伝ポスター。
原題はプライド・パレードの「PRIDE」なんだね。邦題はその社会的意味合いをほぼ打ち消してしまっているけれど、この映画のエンタメ的な面白さを考えると、それはそれでアリなのかなと思う。
最初に書いた通り、掛け値なしで面白かった。
2026年4月25日 Amazon Primeで鑑賞
